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RAIN
薄い秋霧の朝、ふと身を震わせる寒さに目を覚ます。
カーテンを開け、何気なく窓枠に切り取られた外を見る。
山に敷かれた緑の木々は、赤や黄色にその姿を変えつつある。
秋の気配は過ぎ去り、また新しい秋が到来したことを教えてくれた。
その事は今年という今が終わりに近づくこと。
私は溜息をつき、手元の機会を操作すると写真を呼び出す。
年月毎に整理された写真。
遠い過去をスライドさせて行くと、今はない暖かな時間に思わず手を止める。
写真に残されていた「家族」という幸せの記録。
2年にも満たない過去達が、今はもうはるか遠くの出来事の様。
最早胸を焼く痛みはなく、この寒さに満ちた部屋の様に心は冷たい。
その気持ちは自ら封じ込めたもの。
人生の痛みに慣れきってしまえば、人はその感情を閉じ込めるのは容易になる。
普通の人生を送っている人から見れば、人間として終わっていると言われるかもだが、
その様な知恵を身に着けなければ、人の心は簡単に破綻する。
目の前に写る秋空の中の家族の風景。
確かに存在していたのだと証しする物。それをただ確認するだけのフレーム。
もう少しすれば、冬が来て年が明ける。3年目の日々が来る。
ただそれだけの事。そう告げる私の心は山の木々達と同じく枯れ始めている。
だがそれは幸せな事だろう。幸せを求める心と引き換えに、哀しみすら忘れていく。
そして救いを求めて、平安が与えられたのだから。

秋心
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