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恋                  ​2017年8月31日UP

 

起き抜けの暑さ、肌ににじむ汗の季節。

 

エアコンより吐き出される冷風に安堵しながら朝の準備。

 

鞄を籠に、肩に掛け、僕は、私は自転車に乗る。

 

路上に燃える蜃気楼、行きかう車の流れ。

 

しばらくサドルを蹴りながら、出会う友人たちとあいさつを交わし,

 

昨日のテレビやネットの情報で騒ぎ合う。

汗に不快な体を清めたのに、朝の熱気に行きかう他校生や友人達も

 

首からタオルを垂らしながら、楽しげに話し笑顔を絶やさない。

 

僕は友人との会話の中で、密かに憧れる人の姿を探す。

 

他校生と入り混じる通学の中、一目惚れをした同じ時間帯に存在する彼女。

 

友達は最近噂になっている、他校男子の話に花を咲かせながらその視線は忙しない。

 

私は気になりながらも自分自身に自信が無いから、ただ頷き心伴わない笑顔を返す。

 

僕は視界の端に彼女を見つけ、振り向く。

 

突然沸き起こる黄色い声と視線に、私は視線を同じくする。

 

その視線の先には噂の人。周りの喧騒が消え去り、私は息をのむ。

 

突然、切なく胸を焼く感覚。でも、私には過ぎた想い。

 

苦笑と共に騒ぐ友達へと視線を移すしかない。

 

耳に煩いほどの心音、視線の先の彼女と断絶する空間。

 

初めて見た時から忘れもしない姿は、僕にとってはとても手の届かないだろう高嶺の花。

 

届かないだろうと思いつつも、瞳をそらして自転車を止める。

 

「私にはとても遠い人。傷つくのが怖いから、この想いはこのままで・・・」

「どんなに高根の花でも後悔するのが怖いから、僕はせめて声だけでも・・・」

 

彼方と此方。時の流れと共に互いの距離が近づいていく。

 

近づく彼の姿に私の胸は早鐘を打ち、まともにその姿を見ることができない。

 

近づく彼女の姿に顔が熱くなり、手には汗。けれども僕は敢て視線を向ける。

 

私じゃない!

君を見つけたから!

 

あれだけ騒いでいた友達の声が唐突に消える。

 

私は何が起こったのか分からずに、視線を彷徨わせ・・・

 

彼女が近づくごとに、本当に良かったのかと不安がせり上がる。

 

でも、これは自分自身が決めたこと。もう引き返せない・・・

 

何かの話に花を咲かせていた彼女の友人達が口を噤む。まるで何かを期待するように。

 

彷徨わせた視線の先には、私の姿を映す彼の瞳。望外の出来事に心臓が飛び跳ねる。

 

「「あの・・・」」

 

恐れを乗り越えた僕の行動のすべての代償と・・・

自信がなかった故に諦めかけた私の思いが・・・

 

新しい日々の誕生として、僕の、私の世界を優しく包み込む。

 

恋のスタートに劇的な出来事なんて必要ない。すべては様々で、それでいい。

 

若さ故の一途さや、純粋さがあるからこそ恋の思い出は光り輝く。

 

お互い過ごして来た風景を凝縮した、フォトパネルを見ながら互いに笑い合う。

 

この幸せが永遠に続きますように。互いを思い遣る心がいつまでも続きますように。

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